ちいさいころのあたし「いやー、さいしょはびっくりしたなぁー!」
ちいさいころのあたし「あたしがいもうとになってるなんて、ちょうびっくり!」
「あはは…。アタシのせいなんだ…。アタシがその場の好奇心に負けたから…。」
申し訳なさそうに頭を掻き、目を逸らす。
目の前の『紗夜』は、話を続ける。
ちいさいころのあたし「あたしはあたしでしょっ? なーにおちこんでるのっ?」
「…。」
ちいさいころのあたし「なまえがかわったって、あたしはかわらない!」
「…っ!」
夜のヴェールに覆われた心に、光が差し込む──
眉間に皺を寄せ、ただひたすらに目を逸らし続けた。
ちいさいころのあたし「ほんらいのあたしは、あねだとかいもうとだとか、そーいうのきにしないひとじゃん?」
ちいさいころのあたし「だからさ、きにしなくていいよ! さよでもひなでも、あなたはあなた!」
「…っ。」
目を逸らすのをやめて、『紗夜』の方を向く。
闇が徐々に白いヒビによって砕け散っていく。
ちいさいのころあたし「あなたがつくりあげたそのかがやきは、あなただけ…あたしだけのものなんだから!」
ちいさいのころのあたし「なまえがかわったぐらいで、うしなわれない! あたしはあたしだけのもの!」
「…っ!」
言葉がうまく発せない。感嘆の吐息を発するので精一杯。
アタシの目に輝きが戻り、涙がツーっと溢れる。
ちいさいころのあたし「なまえがかわっても、あたしはいっしょ!」
「…っ、ん。」
ちいさいころのあたし「だからこれからもじしんをもってあゆんでいけばいいよ!」
その笑みは、アタシの闇を溶かした。壊した。アタシの心に光が満ちる。
そして一気に目の前の景色が灰色になり、ヒビが入る。
──やがて、アタシは目覚める。
見慣れた自室の天井が視界いっぱいに広がる。