-CiRCLE-
私たちモニカは今、CiRCLEで練習をしている。
曲は私が『男の薫さん』に恋していた頃に書き上げたもの。
「〜♪」
ジャーーーーーーン
「…しろ、お前前より声の通りが良くなったな!それに歌詞間違いもしてねぇ!すげぇ!!」
「そ、そうかな…。」
「二葉さんから聞いたわ。自分の気持ちに正直になったのでしょう?」
「う、うん…。」
「もう薫さんの事はアウトオブ眼中〜?」
「うん。もう薫さんに恋してないって自覚したから、薫さんの事を考えるのをやめたよ。」
「そっかぁ〜。」
「アウトオブ眼中とかふりぃ〜w」
「…この曲、歌ってて恥ずかしくなったりとかはしない?」
「もうしないな。私は過去の感情とは決別したから。この曲も、いい思い出だよ。」
「…そっか。」
(今日のましろちゃん、いつもと声のボリュームが違う。それに、とてもハキハキと喋ってる。…なんだか腑に落ちないけど、ましろちゃんが自分に正直になれたことは良いことだと思う。)
「あ、そうだ〜。今日は広町おすすめの店でご飯食べな〜い?」
「おっ、いいなそれ〜!何の店だ?」
「激辛ラーメン専門店〜。」
「…アタシは別にいいけど、しろとふーすけには毒じゃね?それ。」
「うん…か、辛いのは…ちょっと…無理…。別の店にして欲しいなぁ〜…。」
「私も辛いのは苦手だなぁ…。」
「私は平気だけれど。」
「そりゃルイはいけるっしょ。お子ちゃま二人組が辛いのダメなだけで。」
「…い、今のは冗談だよね?七深ちゃん。」
「え〜結構本気なんだけどなぁ〜。…じゃあ別のとこ行こっか〜。」
私の平凡な日常は、こうして取り戻された。
明日からはまた、普通の生活に戻る。正直少しだけ寂しいけれど、それもまた青春だと思うんだ。
初恋なんてものは少し惜しいぐらいで丁度いい。それに、気持ちが離れてるのに離れてないと思い込むのは不健全だ。
楽器を片付け、CiRCLEを後にする。
-Fin.-
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-おまけ・2月19日-
寒い冬。そして、私の誕生日。月ノ森にも慣れたし、月ノ森生としての自覚も出てきた。
モニカも人気が徐々に出てきた。私もバンド始めたての頃に比べたらだいぶ歌が上手くなった。
—-もうすぐ進級すると思うとなんだか憂鬱な気分。そんな時に、ママから呼び声がかかる。
ましろママ「ましろー、降りてきなさーい!瀬田薫さんから誕生日プレゼントが届いてるわよー!」
「はーい!」
階段を駆け降りる。真冬の空気はとても冷たく、部屋に出るのも億劫になるぐらいだ。
急足で暖房の効いたリビングに辿り着き、冷気を入れぬようにドアをピシャッと閉める。
なんで薫さんが私の誕生日を知っているんだろう。透子ちゃんが漏らしたのかな?
ただそれは悪い気はしなかった。
「…えっ。」
ましろママ「何が入ってるのかしら。」
「わ、私が開けるよ…。」
段ボールの中をその場にあったカッターで開けると、高級そうな綿に包まれた詩集とメッセージカードが入っていた。
香水なのか知らないけど、薔薇を中心としたフローラルな香りが漂う。
メッセージカードを読み上げると、こう書いてあった。
『ましろちゃんへ。誕生日おめでとう。by Kaoru』
質素なお祝いだった。誰かが私が薫さんが嫌いだと漏らしたからかな?気を遣ってくれたのか。
そんなことが脳裏をよぎる。
あの時の初恋はとても瑞々しくて、心地の良いものだった。今となっては良い思い出だ。
次に、詩集を開けてみる。—–シェイクスピアの詩と自作の詩が混ざっているようだった。読んでいると恥ずかしくなり顔を赤く染めてしまう。けれど、これは作詞のために使えそうだ。とっておこう。
私は薫さんのこういうナルシストなところが嫌いだ。けれど、薫さんのサービス精神に溢れたところは好きだ。
ましろママ「…私、お出かけに行ってくるわね。お留守番頼んだわよ。」
「わ、分かった…。」
お母さんがコートを羽織って外に出かける。私はリビングの暖房を消し、炬燵の電源を切り、リビングの電気を消して詩集とメッセージカードを抱えて自室に戻る。
(薫さん、誕生日を祝ってくれてありがとう。)
面と向かっては言えないけれど、心でお礼を言う。
伝わってるといいな。
-真のFin.-