戸山香澄は、私にとって絶対的なスターである。
その名の通り、多くの人々を明るく照らす星のような存在であることもさることながら、誰とでもすぐに仲良くなれる開放的なパーソナルスペースが人気者であるゆえんだろう。
休み時間に周りの子たちとバカ騒ぎしている時だったり、食堂で見かけた軽音楽部員といつのまにか連絡先を交換している時や、絶え間ない遊びの誘いに難なく対応している時などなど――。彼女の人望もとい”人たらし”は、数えてみれば切りがない。
それこそ、知り合ったばかりの人に平気で抱きつくなんてことは、もはや常軌を逸して呆れてしまう。あいつと私の人に対する積極性は、いったいどこで差が付いたのだろう……と、柄にもなく不安を感じてしまうほどだ。
いっそのこと、私も思い切って誰かにハグしてみるか。
交友関係が乏しい寂れた青春を少しでもきらびやかにすべく、ほんのささやかな制服越しの接触に思いを馳せてみるのも悪くない。それに、ミュージシャンには感性が必要だ。感性とは、人と人の関わり合いの中で磨かれていくものである。
ともすれば、この一見無謀ともいえる挑戦は、まさに今の私にうってつけではないだろうか。来週はライブの予定だし、技術面の向上と、ポピパのメンバーとしての私をアピールすることができる。まさに、一石二鳥だ。