「我々に実体はない。我々は君達が頼る「秩序」や「規範」そのもの。この国が消滅しない限り我々は存在し続ける。」
「お前達が不滅なら,なぜ支配を続ける為に個人の自由を奪い,デジタル情報を検閲する?.」
「我々の為でない,君達の為だ」
「何?」
「今世紀初頭にヒトゲノム情報の読取りが完了した。その結果,地球生命48億年に渡る人類の進化過程が明らかになった。」
「遺伝子操作をはじめ,生命のデジタル化に成功したんだよ。」
「だが一方で遺伝上に載ってないのがある。人の記憶や思想,文化や歴史だ。遺伝子には人類の歴史は刻まれてない。」
「それは伝えるべきか?これまで同様,自然界で淘汰されるべきか?」
「我々の先祖はそれらを語り伝えて来た。言葉や絵,文字を使って…石版や書物に記録しながら。だが全て後世に伝えられて来た訳でない。選択され加工されて継承されて来た,遺伝子のように。それが人の歴史だ。」
「だが現代社会では日々の情報が蓄積され,些細な情報がそのまま保存される。」
「永久に劣化しない。誰が言ったかも分らないゴミのような噂,間違った解釈,他人の中傷…あらゆる情報が濾過されず,保存され後世に伝えられる。それは進化を止める。」
「君は我々が行おうとしてるのを単なる検閲と思ってないか?」
「違うとでも言うのか」
「我々がしようとしてるのは,コンテンツの制御でなく,コンテクストの生成。」